塚本雅久建築設計事務所
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「建築の再生活用を市民と考える」を終えてのつぶやき
2023年2月5日に岡山市民会館で「建築の再生活用を市民と考える」を開催しました。私としては、建築イベントで初めての中心的な役割で、不安でしたが、メンバー、講師の方々の力量で、充実した会になったように思っています。
この会は、「岡山市民会館」が閉館し解体されるという疑問から立ち上がった会です。ただ現状、既に解体までのスケジュール設定があり、何かの礎になればという姿勢もあります。
***
以下。プログラムから。
・岡山市民会館見学
講師は、山田孝延氏(岡山県立大学名誉教授)と増田俊哉氏(岡山理科大学教授)。近現代建築物緊急重点調査というのが一昨年あり、御一緒させて頂いたお二人で、岡山市民会館の建築的観点から言えば、外せないお二人と認識しております。今回、私は運営側なので見学はできませんでしたが、内容の概要を確認した時に、ホールのデザイン、音響はもとより、通常、気づかない視線であったり、階段の計画、構造等を計画しておられ、楽しめるものになっておりました。このような見学会を一般の方にもっと多く参加して頂ければ、また別の判断があったのではないでしょうか。
※近年の岡山市民会館での見学会
2015年10月「建築文化週間2015戦災復興より70年-岡山の建築と街のあゆみ再考-」岡山市内の建築7コースの一般公開(日本建築学会)。
2018年8月「建築家のしごと展」の企画による見学会。
・シンポジウム+座談会
鯵坂徹氏(鹿児島大学教授)は、JIA保存再生活動やDOCOMOMO Japanに携われ、国際文化会館という三巨匠の建築家設計の改修設計に携わり、学術、実務の近代建築改修のスペシャリスト。私も以前JIAの修復塾サロンにおいて講義をお聞きしており、ご参加を楽しみにしておりました。シンポジウムの内容は、国際文化会館の改修を中心に、近代建築の危機を伝えて頂きました。ヴィクトル・ユーゴーの言葉で、「建造物には2つのものがある。用と美である。用は所有者に属し、美は皆に属する。したがって、それは破壊する権利を上回る」を紹介され建築文化の根源のように感じました。座談会では、「価値のある建築物をなくすという事は、外に出て歩けない。」と言われ、再生保存に限らず、デザインに関わる建築家の矜持を伝えてもらいました。
・シンポジウム+座談会
花本猛氏(株式会社佐藤総合計画)は、防府公会堂(設計:佐藤武夫)の改修設計に携われ、JIA中国建築大賞特別賞を受賞されていました。株式会社佐藤総合計画は、岡山市民会館の設計者、佐藤武夫が創設した建築設計事務所を継承・発展させた組織事務所であり、共通項を探らせてもらいました。内容的にも設計計画の詳細まで、ご紹介頂き、現代のホ-ルとして活用できる流れを学ばせて頂きました。
・シンポジウム+座談会
来間直樹氏(クルマナオキ建築設計事務所)は、米子公会堂(設計:村野藤吾)の保存運動に携われていました。米子公会堂は、(株)日建設計において改修設計されJIA中国建築大賞特別賞を受賞されています。私自身、最も注目した方で、興味深い内容でした。建設時の米子公会堂の建設費は、地域住民の募金が行われ、募金額は3300万円、法人、県外を加えると5200万円もあり、建築物が地域の活動により建設されいるのは、感心しました。この時点で、みんなの建築物であったのです。1回目の改修は、村野藤吾氏がし、そして2回目の改修。保存会の発足、耐震診断の疑問からの流れ、愛着ある市民活動。一つのお手本となるような流れは、非常に参考になるものでした。建築家とは、デザインを提案するのが主流で、私もそれを信じてやってきたようなものですが、デザインというは、社会に対する提案であるので、こういう活動も建築家の仕事のように思い始めた活動ですが、このような事例を拝見すると、実感できたように感じました。
・シンポジウム+座談会
佐藤正平氏(佐藤建築事務所)は、岡山の建築に携わる方、岡山市周辺の一般の方にも、知らない人がいないと思われるルネスホールを設計をされた方です。岡山に、いながら今回初めてお会いできて嬉しい出来事の一つです。ルネスホールは、旧日銀岡山支店の改修であり、平成10年に岡山県が取得、そして以前に図書館への改修予定があり、それを変更しホールの設計に至っています。設計内容では、デザインの要所である補強と設備を交えた柱デザイン、都市に開かれた計画を紹介して頂きました。最後に、長期に渡るこの計画において「ゆっくりと粘り強く、持続するこころざしが大切」と言われ、「市民+建築家」の重要性を説いて頂きました。
・座談会
弥田俊男氏(岡山理科大学建築学科准教授)は、この会の準備段階からアドヴァイザーとして参加して頂いてる方です。その打合せには、建築家の神家昭雄氏も出席して頂き、両名様には感謝致します。座談会の出席において、岡山市民会館周辺の地域性について印象に残りました。岡山でのこの地域の重要性から、ルネスホールの素晴らしさ、そして、弥田氏の参加されている保存再生プロジェクト福岡醤油の位地的な環境を踏まえ、岡山市民会館の重要性を伝えてもらいました。
・シンポジウム+座談会 コーディネーター
笠原 一人氏(京都工芸繊維大学助教)は、この企画のメンバー選定に深く関わり、以上の内容、メンバーをまとめ、濃くわかりやすい内容として、コーディネートしてくださりました。それは、笠原氏自身の知識や経験によるものであり、建築への深い造詣を感じるものでした。
以上のように、濃い内容が繰り広げられ、運営側が言うのもおかしいですが、このような素晴らしい会は、なかなかないのではないかと思う程でした。
第二弾を、JIAの支部行事として予定しております。良き会ができるように、メンバー一同、頑張りますのでよろしくお願いいたします。
***
今回、心に残るキーワードとして、街や都市の魅力であると共に、公共建築は、市民のものであるという事です。今まで岡山市民会館で行われたイベントは、様々です。コンサート等もありますが、地域の行事も行われています。このような記憶というのは、建築物の愛着でもあり地域の愛着としてもつながるものです。私は、岡山県西部の市に住んでいますが、学生時代は、ロックミュージシャンのライブによく行ったもので、路面電車の城下駅ぐらいからの(西側)ゆるやかな坂道をあがりながら、八角形のファサードがあらわれ、右側のツタに覆われた喫茶、BARの建物を垣間見ながら、公園につながり、ピロティ部分で並び、建築物内に入り、二階席になると、ステンドグラスの前を通り座席に着くというシーンは頭に焼き付いています。この頃の私は、特に建築を志している時期でもないので、たぶん、岡山市近郊の方は、それ以上に思い入れはあるのではないでしょうか。
「岡山市民会館」に限らず、建築物は、街の重要な要素である事です。老朽化という表現もありますが、歴史、時間を積み重ねたものという表現もできます。歴史、時間を重ねるという、時間をコントロ-ルする事はできません。これは魅力的な要素です。ニュースとかでもよく取り上げられるインバウンドは、日本文化を求めてきます。それは、京都のような歴史的な環境にのみならず、日本独自の環境、サブカルチャー等、多伎に渡ります。開発が繰り返す都会への魅力もありますが、地域性を求めて行動する事はよく知られています。これは日本人でも同様とだと思いますが、その財産につながる解体は各地であると思います。昨今は、街歩きというイベントもありますが、主要な建築物をつなぎ歩いてみと、新しい魅力を発見、再認識ができるので多くの人に体感してほしいもので、特に、この周辺の計画は、素晴らしく、公園、他の建築物の関係性、高低差など魅力的に誘導していきます。
そういう事を考え、建築物に視線を移し、「岡山市民会館」は、岡山の近代建築を代表する建築物の一つであり、一部耐震に問題がありますが、耐震補強なり、一部修繕、全部を壊さなくても一部解体とかで何とかなりそうな感じですが、このようなスケジュールが設定されているのは、議論が、何かのタイミングで、すり抜けて行ったのかなと思う程です。
by tsukaarchi
| 2023-02-08 17:24
| 建築
|
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